
犯罪不安社会 誰もが「不審者」?/浜井浩一・芹沢一也
日本の治安の悪化が当然のことように語られるのを聞くと、私は無性に腹が立ってきます。
何を根拠に治安が悪化しているというのでしょうか。
本書を読めば、日本の治安は決して悪化しているわけではないということがわかります。
今回は少し詳しく内容を見ていきたいと思います。
『第1章 犯罪統計はどのように読むべきか』
警察の発表する犯罪統計は注意して読まないといけません。
意図的な数値の操作が行われているということではなく、警察の活動方針の転換により治安の実態とはかけ離れた数値が出てくることがあるからです。
具体的には、警察発表の暴行・傷害の認知件数が2000年に前年比で40%近くも増えているのですが、検挙率は逆に下がっているのです。
実際の日本の社会で、たった一年でこれほど治安状態が変化したとは思えません。
原因は、警察の活動方針がある事件をきっかけに大きく転換したからなのです。
その事件とは1999年に発生した桶川ストーカー事件です。
このときの警察の不手際や怠慢に批判が集中したのは記憶に新しいと思います。
そしてその批判に応えるために、警察に持ち込まれる困りごと相談や事件通報に積極的に対応するようになったのです。
急激に増えた相談件数に呼応して認知件数も増えたのですが、それを処理する能力を超えた件数を受け付けるようになったため、検挙率のほうは逆に下がってしまったのです。
この警察の活動方針の転換を知らずに数値だけを見てしまうと「治安が悪化した」と勘違いしてしまうのです。
警察の活動方針に影響されにくい統計調査として、厚生労働省の人口動態統計というものがあります。
この統計の「加害に基づく傷害および死亡人員数」を見ると、1984年以降は多少の増減はありますが減少傾向にあり、2000年以降は単調に減少しています。
ほかにも法務省の犯罪白書にも紹介されている「犯罪被害調査」を見てみるとわかりますが、ほとんどの犯罪が2000年以降は減少しています。
これらの客観的統計みても「治安が悪化した」とは到底いえないのです。
もう一つ、「少年非行の低年齢化」について同様に犯罪白書の数字を見てみると、少年非行のピークの年齢は高齢化しており、またピークそのものも減少しているのです。
そして暴走族も同様に減少かつ高齢化しています。
そして、ここで問題なのは「少年非行の報道の見出し」なのです。
たとえば、見出しに「中学生ら」とあっても実際の主犯は20代の若者だったりするのです。
マスコミはどうしても「少年非行は低年齢化している」ということにしたいようです。
さらに筆者は全国を対象として無作為抽出で次のような質問で調査を行っています。
「2年前と比較して、自分が住んでいる地域と日本全体で犯罪が増えていると思いますか?」
その結果は、自分が住んでいる地域で「とても増えた」と回答している人は3.8%なのに対して、日本全体では49.8%となっています。
つまり、『自分の周りでは治安はそれほど増えていないが、日本のどこかでは治安が悪化している』と感じているということだそうです。
「日本のどこか」ってどこなんでしょうね?(笑)
朝日新聞の記事で「凶悪+殺人」というキーワードで検索してヒットした件数を見ると、多少増減はあるもの1980年代後半から徐々に増え続け、2000年代後半には4倍にもなっています。
しかし、実際の殺人の認知件数は1980年代後半は減少していて、1990年代以降はほぼ横ばいになっています。
同じように「子供+不審者」で検索すると、1997年以降は増加傾向にありますが、同時期の他殺による子供の死亡者数は減少傾向になっています。
・・・
本当は4章全部見ていきたいのですが、私の文章力も時間も足りませんので、ブログではここまでにしておきます。
- 2008/05/26(月) 23:59:59|
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